0312


もう2週間ほども前ですが、「ディパーテッド」のマーティン・スコセッシ監督とレオナルド・ディカプリオが再びタッグを組んだミステリー大作「シャッター アイランド」を観てきました。「ミスティック・リバー」のデニス・ルヘインの同名小説を映画化し、公開第一週はアメリカの興行成績でもトップだった注目作。
上のポスターは左がアメリカ版、右が日本版。日本版の下の方に「10.30」と書いてあるのは、当初、日本では昨年の10月30日(アメリカでは10月2日)に公開予定だったものが延期になったからだ。公開延期の理由は、10月公開でアカデミー賞レースのまっただ中に飛び込むために必要な宣伝費をパラマウントが捻出できなかったと言われている。
舞台は1954年のアメリカ、精神障害を持つ犯罪者だけを収容した孤島”シャッター・アイランド”。我が子三人を溺死させた罪で収容されている女性患者レイチェル(エミリー・モーティマ)が密室から忽然と姿を消してしまう。連邦保安官のテディ(レオナルド・ディカプリオ)とパートナーのチャック(マーク・ラファロ)が現地での捜査に乗り出すが、医長であるコーリー医師(ベン・キングズレー)や看守、看護婦までもが捜査に非協力的であるばかりか、解決への手がかりは全く見つからない。そのうえテディは、数年前に死んだ妻ドロレス(ミシェル・ウィリアムズ)が夢に現れては、頭痛や幻覚などに苦しむようになってゆく。やがてテディはこの島にはもっと重要な秘密が隠されていると思うようになるのだが…。
映画としては編集に隙が無く、いくつもの展開が続き緊張感にあふれた作品なのだが、話が進めば進むほど訳が分からなくなっていく。しかも事件は解決の方向ではなく脇道にそれていくばかり。主人公と一緒に何度もロストしながら、ディカプリオの鬼気迫る熱演を観ているうちにラストを迎えてしまった。
観ている時は非常に楽しめましたが、後になって考えると作品の評価としては賛否両論になりそうなクセモノだと思う。アメリカ人には受け入れられにくいかも。
日本でも4月公開予定です。公式サイトはこちら。
0124

ジョージ・クルーニー主演のドラマ「マイレージ、マイライフ」を観てきました。監督は「JUNO/ジュノ」のジェイソン・ライトマン。最近、映画というとBlu-rayばかりになってしまったが、これは映画館で観ておきたいと思っていた一本。NY批評家協会賞で主演男優賞、ゴールデン・グローブでは脚本賞を獲得している。もちろんオスカー・レースにも入るだろう。
アメリカ中の企業を訪れてはその会社の幹部に代わって従業員にリストラ宣告をするダウンサイジング・エキスパートのライアン(ジョージ・クルーニー)。一年のほどんどを出張して過ごしている彼は、スマートに旅をこなし、アメリカン航空の顧客でまだ6人しか達成していないという1000万マイルのフライト記録にもあと一歩に迫っていた。ある日、同じようにアメリカを飛び回っているアレックス(ヴェラ・ファーミガ)と出会って意気投合し、二人は旅先で時々会うようになるが、「バックパックに入らない荷物は持たない」という人生哲学を持つライアンはあくまでもカジュアルな関係を維持していた。しかし、ライアンの会社の新入社員ナタリー(アナ・ケンドリック)が、ネット通信でリストラ宣告をするシステムを発表。誇りを持って仕事をこなしてきたライアンにとっては屈辱的なばかりか、出張の必要が無くなることでこれまでのライフスタイルまで脅かされることになり…。
ビシッとスーツを着てスマートかつ自由気ままに生きる独身男性が、人とのつながりや家族の大切さに目覚めてゆく…というお決まりの展開かと思いきや、本作はもっと複雑で深かった。一人の男の仕事ぶり、大人の恋愛、女子新入社員とのギャップ、妹の結婚、そしてリストラされる人々の人生と、ドラマとしては多くの要素が詰まっている。観る人によって、さまざまな立場から、今の時代に幸せを見つけることの難しさを考えさせらるだろう。これまでの自分の生き方すべてに疑問を持ってしまった中年男性を、軽快なテンポで、シニカルにかつ愛情こめて描く。
本作の原題は「Up In The Air」。この言葉には、ライアンが多くの時間を空の上で過ごしているという文字通り「空の上」という意味と、リストラされる人々のこれからの生活が「全く決まっていない」という意味、さらにはライアンの人生さえも完全に「わからなくなった」という意味もこめられているのだろう。邦題はちょっとコミカルで原題の意味がなくなってしまったのが残念。キャッチコピーの「The story of a man ready to make a connection.」の「connection」も、フライトの「乗り継ぎ」と人々との「関わり」をかけている。
作品の後半はほろりときました。間違いなくお勧めです。
日本では3月公開予定。オフィシャル・サイトはこちら。
0922

9/18から全米で順次公開が始まった「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」を観てきました。英題は「Evangelion: 1.0 You Are (Not) Alone」。ニューヨークではイーストビレッジの映画館で一週間だけの上映。
ずいぶん前から楽しみにしていたのに…映画館のホームページには「Japanese Language (with English Subtitles)」と書いてあったのに…冒頭、シンジが電話をかけているシーンで「The number you’ve dialed….」という音声が聞こえてきてガッカリ!
英語吹き替え版でした。(この国はこんなところにも誤情報が!)アニメというだけで子供も観るから英語吹き替えが当然、と思われている国ですからいまさら期待した方が悪いのだが。英語吹き替えもそう悪くはなかったが、ミサトの声が時々おばさんっぽく聞こえてしまったのが残念。
私が観に行ったのは日曜の夕方で客席はガラガラ。前の席では一人で来ていたおばあさんが居眠り…。でも高校生ぐらいの、見るからにコアなファングループが異常な盛り上がりを見せていて、最後には「2年後に会おう!」と叫んでいた光景はなかなか面白かった。
私はたぶん2年も待ちたくないので「破」は日本盤が出たときに観ようかと…
さて肝心の内容は、急ぎ足ではあるがTV版より設定が分かりやすくなっていたし、映像はクリーンで迫力もあり期待が裏切られることなく楽しめた。
ひとりの監督が人生を賭けたロマンと力強さを感じられる気がするので好きな作品です。
Funimationの公式ページはこちら。
0914
週末の全米興行成績では第2位につけていたティム・バートン製作のCGアニメーション「9」を観てきました。

監督は新人のシェーン・アッカー。本作は2006年度アカデミー賞短編アニメーション部門にノミネートされた自身の「9」を長編化したもので、ティム・バートンのほか、「ウォンテッド」の監督であるティムール・ベクマンベトフがプロデューサーとして名を連ねている。声の出演はイライジャ・ウッド、ジョン・C・ライリー、ジェニファー・コネリー、クリストファー・プラマー、マーティン・ランドーなど。
設定は人類が機械に滅ぼされた近未来。背中に番号を付けた小さな人形たちが、破壊兵器と化した機械との戦いを続けていた。しかしあるとき”ザ・マシーン”と呼ばれる最強の機械が目覚めてしまう…。
映像がすごい。東欧の人形アニメーションがティム・バートンの高度なCG技術と融合し、さらにハリウッドの大アクションが加わり、またひとつ別の種類のアニメーションが誕生したようだ。世界観やキャラクターのクリエイティビティが高く、精密なCGとあらゆる物を活用したアクション・シーンのエンターテイメント性は最高級だろう。
布をまとった小さな人形のような者たちと人間との繋がりも深い意味があって、ちょっと感動。
そして確かにブラザーズ・クエイやヤン・シュヴァンクマイエルへのオマージュも見られる。
冒頭でなぜかこの世界観に入り損ねた私はいまひとつ完全に楽しめず、取り残されたまま79分があっと言う間に過ぎてしまったのでもう一度観ないと気が済まない感じだ。ちゃんと堪能しないなんて勿体ない!滅多に出会えない貴重な一本だろうに。
0912
是枝裕和監督作、阿部寛&夏川結衣主演の「歩いても、歩いても」が8月28日にアメリカで公開された。こちらでのタイトルは「Still Walking」 。ニューヨークではAngelika Film CenterとLincoln Plaza の2館で上映中だ。


実は公開予定があるのを知らずにこの間日本盤DVDで観たばかりだったのだが、最近観た中でも特に心に残っているので周囲の人にも勧めているところ。これを観た後、マンハッタンの高級焼き鳥屋で珍しく「とうもろこしのかき揚げ」があって歓喜。ほんのり夏のお盆の味がしました。
日本人もアメリカ人も、観た人は一様に「良かった」と言っている。感想をうまく言葉にするのが難しいが、感情として「良かった」と思える作品ですね。
写真右は今週のEntertainment Weekly 誌のコラムで「B-」をゲット!。EW誌の映画レーティングはいつも非常に辛いのでBマイナスはすごく良い方。「是枝監督は『東京物語』や『Junebug』の精神で日常の雑事を描きながら最後に大きな変化を持たせようとしており、滑稽で無味乾燥な描写は精密だが最小限の感情はほとんどフェティシズム的。しまいにはちょっとイライラ。」と、良くもあり不満もあるようなレビュー。
ニューヨーク・タイムス紙のレビューは相変わらず難解だがもっとちゃんとしたもので、「これは思い描かれたものではなく生きた生活で、共通の悲しみばかりでなく一緒に過ごした時間でもまた結ばれてゆく家族の姿」というような文章で締めくくっているのだが、その一緒に過ごした時間の最後、つまり映画の結末には「ガツンと来る」とも書いてある…やはり、そこですよね。
ところで本作の配給元、IFC Filmsはこのほどクライテリオンとの提携が決まったというニュースがあったばかり。これからIFC作品がクライテリオンからリリースされる予定なのだが、来年のラインアップの中には「Still Walking」も入っている!ちょっと楽しみ。