0729
7月最後の業務週報。今週もあっという間に一週間が過ぎてしまった。
数日前に健康保険の更新手続きをした。会社が社員のために加入している健康保険は一年ごとに更新することになっていて、7月末がその時期なのだ。
またも自分は過去一年いちども保険を使わなかったな、と思うのがこの日。医者いらずの日々を更新しつづけているのは、ありがたいことだ。
アメリカには国が運営する健康保険制度がないので、個人や企業が民間の保険会社を選び、さらにその会社が提供するさまざまな類いの保険プランから選んで加入する。一年ごとの更新というのは経営側にとって都合よくできているもので、更新毎にしっかり保険料が上がる。が、払う方にとっては限度があるので、今回の更新で少し違うプランに変更した。
少し違うプラン、とは言っても正直なところ保険の内容を完全に理解しているわけではない。健康保険がどういった診察、薬、検査に適用されるか、その内容や負担率は詳細に決められている。が、保険契約書は一般人にはわざと理解できないようにしているとしか思えないような難解な言葉と記号が並んでいるのだ。
ちょうどマイケル・ムーア監督の「シッコ」(原題は「SiCKO」) という最新作が話題になっている。監督流のテロ風突撃取材でアメリカの医療制度の問題にメスを入れているものだ。
国民健康保険のないアメリカでは高い保険料を払えない人が当然いるわけで、アメリカ人の6人に一人は保険に入っていないらしい。
保険に加入していても安心とは言えない。加入したらまず保険会社の指定する医師の中から自分で主治医を選ぶので、私はミッドタウンの日本人医師を主治医に選んでいるのだが、日本とは全く事情が違う。アメリカの保険システムは保険会社が医師を管理しているようなもので、治療法から処方する薬まで、保険会社の方に決定権があるというとんでもない実態がある。
必要な治療が受けられないケース、診察を受けた後になって保険会社への請求が認められないケースは珍しくもない。
突然の事故で救急室に運ばれたとしても、治療の前にまず「保険に入っているか?」と聞かれるとか、保険カードを持っていなければ現金かクレジットカードを見せないと治療してもらえないとか、冗談みたいな本当の経験談も聞く。
とにかく普段から健康的な生活を心がけ、ケガなどのないよう十分に気をつけて生活するのが一番、としか言いようがない。
ところで、更新のついでに新入社員の保険加入の手続きをしていたら、個人データ入力のところで「Gender」(性別) の欄があり、選択肢が2つではなくて3つ。
「Male」(男)
「Female」(女)
「Unknown」(不明)
とあって笑ってしまった。
アメリカらしい。
0727
7月22日、日曜日。リンカーン・センターへ平成中村座ニューヨーク公演「法界坊」を観に行った。平成中村座は2004年にニューヨーク初公演を行っており、今回が二回目。前回観たという知人がその時に大感動したと熱く語っていたので、歌舞伎などめったにない機会でもあり、思い切って高いチケット ($125) を買って行くことに。
今回は16日から22日までの日程で、「連獅子」が初日に一回だけあり、その後は「法界坊」で連日満席だったようす。リンカーン・センターを一週間も客に一杯にするなんて、さすが、日本の伝統芸能のなかでも、特に歌舞伎の知名度と人気度が高さが伺える。
私は千秋楽のマチネを観賞。会場入口の所には日本の職人さんたちがその場で扇子や人形を作りながら店を出している。劇場内にはかなりの座席数をつぶして花道が作ってあったり、フロアを提灯が取り囲んでいたり、雰囲気もよくできていた。
観客は年配のアメリカ人が目立つ。着物や浴衣を着ている日本人の姿もあった。
さて「法界坊」は歌舞伎には珍しくコメディ色が強く、分かりやすく、大笑いできる大エンターテイメントだった。お笑い大国アメリカでも十分に笑いを取っていたから、笑わせて楽しませるという点では大大大成功!!
伝統的な無駄が一切無い様式美を基盤に、色恋沙汰や泥棒、殺人やら亡霊やら盛りだくさんのシチュエーションで大人向けの笑いを満載した演目は、とても粋な感じでニューヨークでの公演にぴったりだったと思う。
ところで、せりふはもちろん日本語なので英語音声のヘッドセットが貸し出されているのだが、客席では前後左右からヘッドセットから漏れた音が聞こえてきてちょっと耳障りではあった。日本語と英語を同時に聞きながら観ると、芝居のテンポに乗りながら楽しむのは少々難しかっただろうと思う。
中盤で中村勘三郎さんが英語でジョークを言ったり、お客さんと話す場面もあって、それもまたウケていたが、これはやはり日本語だけで貫いて欲しかった気がする…。
第三幕になるとがらりと雰囲気を変え、一切冗談なしで一気にクライマックスへ。
最後は大喝采で幕を閉じた。
0723
先週はなんとも疲れた1週間だった。まず日曜の夜、このブログを更新後にパワーブックを再起動しようとしたらクラッシュ。全く立ち上がらなくなってしまった。すぐさまFantasium のTech担当に相談、そのあと数日かけて診断とデータの移動作業をしてもらう。
その間、ホームオフィスでの仕事は会社で使っているMac miniを持ち帰っての作業となる。Mac miniは大きなお弁当箱ぐらいのサイズだから、持ち帰ることもできてこんなときは便利。これこそ、「風呂敷残業」。
水曜日午後6時ごろ、マンハッタン41丁目で地下に埋まっているスチームパイプが破裂し大爆発が起きた。Fantasium のオフィスは26丁目にあり、爆発現場とはちょっと離れているので全く影響はなかったが、この夜は地下鉄のダイヤが全面的に乱れた。
私が通勤に使っている地下鉄の路線は事故現場をかすりもしないのに、大幅な遅れが出て帰宅ラッシュ時間は大混雑。ホームで30分以上待っても電車は来る気配なし。駅にはどんどん人があふれていく。あきらめていったん駅を出て、ぶらぶらと近くの雑貨屋を巡って時間を潰し、また駅に戻ってしばらく待ってようやく来た電車に乗って帰った。
週の後半、Fantasium は発送部門が大忙しだった。翌週の新作DVDが一気に入荷してきた木曜日は、午後6時の定時になっても梱包作業が終わらず、ひとり残って作業をしようと試みる。が、たった一人で梱包をするというのはどういうわけか体がリズムに乗らず、不思議と効率まで落ちてしまうことに気がついた。
そこで夜の作業はあきらめて、かわりに金曜は朝7時半から出社してバリバリ仕事をする。金曜日はそれでなくともマンハッタンの交通事情が悪いうえに、パイプ爆発現場付近は「フローズン・ゾーン」と名付けられ、数ブロックにわたって通行止になっていた。
そのためか、UPSによる商品の配達は遅れるし、いつもは時間に正確なUSPSのピックアップも遅かった。誰もがいつもより遅れ遅れでやっているようす…せっかく朝早くから頑張っていたのに周りがスローだと余計な疲れも感じてしまう。それでも1週間の業務を無事にこなして終了した。
週末はリンカーン・センターで「平成中村座」の公演を観に行くという一大イベントあり。それについてはまたこの次に…。
0714
7月と言えば、アメリカはバケーション真っ盛り。日本のお盆休みのようなものはないので、各自で休みを取る。
この時期は小売店が一番暇になる時期でもあって、こちらはレストランなどでも1週間や2週間の夏休みを取る。ブルックリンの商店街を歩いていると、「明日から今月いっぱい休みます」とか、「7月、8月は月曜日は休業します」などといった張り紙をよく見るようになった。
企業によっては、夏の間だけ金曜日は休業とか、金曜は午前中だけというところもあるほど。
Fantasium はそれに反して7月は忙しい時期。日本は夏のボーナスがあるし、この時期はいつもサマーセールをやっている。
よって週末も仕事を家に持ち帰ってきて、日曜は仕事で一日が終わってしまった。
お昼過ぎ、デスクに向かっていると、轟音とともに戦闘機が4機、ものすごいスピードで南の方に飛んでいくのが見えた。私が住んでいるブルックリンのこのあたりは、航空路になっていて旅客機は頻繁に飛んでいるが、あんなのは始めてみた…テロ警戒が高まっているから訓練でもしているのか?
午後は30度まで気温が上がったが、湿度が低く、風もあるのでエアコンも扇風機もいらないほどの快適さで黙々と仕事を片づける。今年は扇風機がいらないほど風の強い日が多い。
夕方、アパートの屋上に出ると、夕日を見ながらくつろぐご近所さんの姿が。
マンハッタンの空も赤く染まっている。
ほんのつかの間の、ニューヨークの夏。
0714
毎週、土曜日の朝にFreshDirectが自宅に配達にやって来る。「FreshDirect」とは、ニューヨークのグルメスーパーの元経営者が始めた宅配サービスで、生鮮品からお酒まで、ウェブサイトで販売している。マンハッタンとその周辺ではすっかりポピュラーなサービスで、テレビCMにはあのスパイイク・リー監督が出ている。
私が今住んでいるところは近所にスーパーマーケットが皆無なので、トイレットペーパーやドリンク類など、決まった生活用品を毎週デリバリーしてもらっているのだ。
配達はいつも朝9時から11時の間を指定。配達時間は正確だし、部屋まで運んでくれるのでとても便利なのだが、5回に一回ぐらいの割合で、間違いがある。(ネット通販には配送ミスはつきものだが…多すぎる)
よくあるのが、頼んでいないものが入っていること。それが大抵の場合は食料品なので、送り返すわけにもいかないし、そのままもらってしまうほかない。いちどワインが入っていた時は嬉しかったが、アメリカの食品は口に合わないものも多いので困ってしまう。
今日は。「Quick Grits」という円筒形の入れ物に入ったインスタント食品がまぎれていた。こんなの聞いた事もない。開封してみると、「クスクス」のような薄い黄色の粗いつぶつぶが入っている。容器に書いてある調理法通り、水を少し混ぜて電子レンジでチンして食べてみたけれど…悪くはないが、また食べたいと思うほどのものではなかった。
調べてみたら、「Grits」とはトウモロコシでできていて、アメリカ南部の食べ物らしい。主に朝食用らしいが、チーズを混ぜて食べるとおいしいとか。
どうも、アメリカ人の食に関する意識はどうなっているんだろうと疑問に思う。健康食品やダイエット食への関心の高さに比べて、「良くないもの」への注目度が低いようだ。
たとえば2003年にBSEに感染した牛が見つかったが、その時の報道はとても地味なものだった。日本が輸入牛肉病のBSE感染で大騒ぎとなった時とは比べものにならないぐらい。アメリカで牛肉が食べられないということになったら経済が崩壊してもおかしくないだろうから、意図的に報道が控えられているのだと思うけど…。
また、つい先日、「Veggie Booty」というスナック菓子からサルモネラ菌が出て、17州で60人以上が発熱するなどの被害が出た。
このメーカーはニューヨークにある会社で、Veggie Bootyはこのあたりのデリやスーパーでは必ず置いてある。メーカーはすべての商品を回収すると発表したが、店頭では今まで通り売られているのを見かけた。TVでもいちおうニュースにはなっていたが、数あるニュースの中の完全に埋もれていた。
国の食品医薬品局 (FDA) は、Veggie Bootyを買わないよう通達を出しているし、被害者はメーカーを相手取って訴訟を起こしているが、どれほどの人がこのニュースを知っているのだろう?と思うほど関心が低い。
またこのサルモネラ菌は、中国から輸入した調味料が原因である可能性が高いという。中国の食品に対して世界中で大騒ぎしているなか、もっと大問題にしてもいいと思うのだが…。
一方で、ファーストフードだけは、さすが主食 (?) だけあって扱いが違う。今月からニューヨークのレストランではトランス酸脂肪の使用が禁止された。トランス脂肪酸は悪玉コレステロールを増やし、肥満や心臓病の原因となる。主にファーストフード店をターゲットにした規制だ。
と同時に、ファーストフード店でメニューにカロリー表示が義務付けられた(未だに反対している店も多い)。バーガー・キングのTriple Whopper with Cheeseという巨大ハンバーガーは1230カロリーもあるらしい。成人女性の推奨カロリーが1800カロリーだから、とてつもないカロリーになる。そもそもそんなものを食べている人たちに今更カロリーを言ったって変わるのかな…。
健康への意識が高いのか高くないのかよく分からないお国柄だが、あくまでも個人的な選択に任せているのかもしれない。口にするものに気を使うなら、自分で目を光らせて安全な食品を選んでいくしかない。そういうことに無頓着でいると、一番手軽なファーストフードで不健康になったり、サルモネラ菌の入ったスナック菓子を食べたり、BSE感染牛をどんどん摂取してく…それも自分の責任で。メディアや社会や国は助けにはならない。