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リバティーン [ Movie ]

The Libertine原題:The Libertine
City Cinemas Angelika Film Centerにて。2004年ローレンス・ダンモア監督作。ジョニー・デップ主演。
17世紀のイギリス。時の国王の寵を受けながらも、その恩を仇で返すような行為を繰り返して幽閉や追放の処罰を受け、女好きで酒浸りの放蕩人生を33年で駆け抜けた、才能ある詩人にして二代目ロチェスター伯爵、ジョン・ウィルモットの生涯を描く。本作はジョン・マルコヴィッチがウィルモットを演じたスティーヴン・ジェフリーズの戯曲作品が元で、今回の映画化にあたってマルコヴィッチ直々の指名によりデップ演じるウィルモットが実現、マルコヴィッチは英国王チャールズ二世を演じている。監督は、本作がデビューとなるローレンス・ダンモア。


常に人々の度肝を抜くような行動をとる容姿端麗な詩人というと、いわば当時の「ロックスター」だったともいえるウィルモット。しかし一見華やかなその生活とは裏腹に、自分を愛する者や評価する者に対してアマノジャクのような態度をとり続け、斜に構えることでしか世の中とかかわることができないという、どこかすねた子供のような心を抱えていた複雑な人物だ。誘拐してまで結婚した妻には愛憎入り交じる思いを抱え、なじみの娼婦だけでなく若く美しい貴族男性ともあやしい仲になる。劇場で見初めた新人女優をロンドン一の女優に育てようと自ら演技指導を熱心に行い、その女優と愛人関係にもなる。ウィルモットの文学的才能を認め、エリザベス女王の治世にはシェークスピアがいたように、自分の治世でエリザベスにとってのシェークスピアになれとウィルモットに期待をかけるチャールズ二世には、大切な国賓が観劇している舞台で衝撃的な性的描写を含んだ痛烈な政府批判の劇を上演するなどして恥をかかせる。追放処分を受けた後は、ニセ婦人科医になってあやしげな処置を行いながら逃亡生活を続ける。
近年ファミリー向けやブロックバスター作品に連続で出演し、すっかりお茶の間の人気者となったデップだが、久々に以前からの彼の指向であったインディー系・アート系作品への出演。破天荒でめちゃくちゃともいえるキャラクターを、嬉々として演じている。さんざん放蕩の限りを尽くし、33才の若さで梅毒で亡くなる壮絶なウィルモットの人生だが、やりたい放題やっているように見える中で、全編を通して彼を貫いている救いようのない孤独感や精神的な弱さを、デップは絶妙に表現した。梅毒のためどんどん崩れていく美しい顔の中で、逆に目には狂気的な凄みが増していく。病状が進行し、行き場がなくなって妻の待つ自宅へたどり着いたとき、自分でも泣けてしまうほど情けない状況に嗚咽するウィルモットの姿は、今までの彼の行いのひどさやずるさがわかっていても、つい同情してしまいそうなほどに弱々しく頼りない。本編が終了してエンドクレジットが流れている間、なんともいえない寂寥感に襲われてしまった。
また、心底あきれ果てながらもその才能や影響力を無視できず、何度もチャンスを与えようとするチャールズ二世を演じるマルコヴィッチの、複雑な心境を伺わせる目の動きや、悪名高いウィルモットを心の底から信じることはできないものの、彼に惹かれずにいられない新人女優バリーを演じたサマンサ・モートンなど、キャストたちの情熱的な演技は一見の価値あり。
映像は、この時代のイギリスやウィルモットならではの退廃的な雰囲気を演出するためか、常に茶色い靄のかかったようなシーンが続く。ただ、人物の極端なアップの連続や、連続回転のシーン、多少揺れのある画面など、じっと真剣にスクリーンを見つめ続けていると、少々乗物酔いのような不快感を感じた。また、意外に大切な事実をセリフひとつで済ませてしまい、セリフを聞き逃すといまいち話が見えなくなる場面があったり、長いセリフに対してカット割りが多少粗く感じる部分があるなど、キャストたちの超一流のパフォーマンスに対し、演出は少々難ありだったかもしれない。
ところでジョン・ウィルモットは「ジョン」だけに、やっぱり「ジョニー」と親しい人間に呼ばれているのだが、ジョニー・デップが役柄でも「ジョニー」と呼ばれているのを見るのは、なかなか新鮮ではある。


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