1214
急激に寒くなった。今朝の気温は、マイナス10度。
Fantasiumオフィスの中は暖房が効いていてぽかぽかなのだが、やってくる人々が外の寒さを運んで来る。
朝9時半過ぎ、背の高いチャイニーズ系のテリーが郵便物を届けてくれる。ここ数日、彼の顔は厳しい寒さのせいでほんのり赤い。
少しすると、日本食系のお弁当屋さんがランチボックスを売りにやってくる。お弁当屋さんは、室内の温度が下がるかと思うくらい冷たい外気と一緒にやって来て、慌ただしくお弁当を売って去っていく。
お昼前、UPS (United Percel Serviceの略。アメリカのメジャーな宅配業者)のジョセフが商品の入った大きな段ボールを大量に届けてくれる。最近は段ボール箱を開けると、中に入っているDVDが冷蔵庫に保管されていたみたいにすっかり冷たくなっている。
午後一番、ゴミを回収しにビルの管理会社のサルバドールがやって来る。エル・サルバドル出身の彼は寒さに弱いのか、さりげなく作業着の下に重ね着をしていたりして、何だか微笑ましい。
しばらくすると、午後の郵便物を届けにアフリカ系のおじいさん、トムがやって来る。その郵便物の中にもクリスマス・カードが混ざって来るようになった。
夕方4時過ぎ、USPS(国際航空郵便)の発送物をピックアップしにウィルがやってくる。普段はおしゃべりでうるさいぐらいのウィルだが、最近は覇気がないどころか、げっそりしているという感じだ。どうも寒さには弱いらしい。
そうやって、毎日オフィスにやって来る人たちも、クリスマスだけは揃ってお休みだ。来週あたりは、みな寒さにも負けずにうきうきとしてくる。こちらもクリスマス・カードとチップを用意しておき(アメリカではこの時期、サービス業の人たちにクリスマス・チップを渡す習慣がある)、「Happy holidays!」と言って、それぞれに一年間お世話になった感謝の気持ちを伝える。
今年も、そんな時期になった。
1213
今、地下鉄通勤のニューヨーカーたちの話題の中心は、「地下鉄がストになったらどうしよう?」。
ニューヨークの地下鉄は、ニューヨーク州の管轄下、Metropolitan Transportation Authority (MTA) という公益法人が運営している。そのMTAと労働組合が、昨日、契約更新のための最後の交渉を始めた。金曜の午前0時までに決着がつかなければ、期限切れとなって従業員はストライキに入る。バスも地下鉄もストップすれば、ほとんどの地下鉄通勤者は仕事に行けなくなるだろう。
地下鉄のストなどという大それた違法行為(NY州では公益法人の職員によるストは禁止されている)が現実になるとは考えがたいが、1980年には11日間もストをやったことのある組合だから、いつまた同じことをしてもおかしくはない。
今回の交渉の争点としては、組合が年8%の賃金アップを要求しているのに対し、MTAは1年目に3%、2年目に2%のアップでの契約を提案。MTAはほかにもベネフィット(福利厚生)面での契約内容の変更を求めていて、例えば、現在は55才の定年を62才にすることや、今は100%会社が負担している健康保険を、これから雇用する新入社員には2%自己負担させるなどというものだ。
働く者が労働条件の向上を求めるのは当然の権利ではあるが、現在でもNY地下鉄駅員の平均年収は5万4000ドル(約648万円)もあり、駅の清掃員でも4万ドル(約480万円)、バスの運転手になると、6万3000ドル(約756万円)もあるらしいから、正直、とても同情する気にはなれない。でも、もっとあきれてしまうのは、2年後には総額8億ドル(約960億円)もの赤字を見積もっているMTAの経営そのもののやり方だ。
職員には高給を払いつつ、途方もない赤字を出し、しょっちゅう遅れたり止まったりしているNY地下鉄。
いったい、誰のために動いているのだろうか・・・。
1212
ハリウッド映画が劇場公開されてから米国盤DVDとしてリリースされるまでの期間は、年々短くなってきている。今日発刊の米国盤DVD業界誌に出ていた2005年度の集計予測によると、今年は劇場公開からDVD化までの日数が、平均して129日と過去最短になる見込みだという。これまでのデータを見ると、1996年に公開された映画がDVD化されるまでの平均日数は180日だったのが、徐々に短縮され、2000年は171日、2004年では144日という結果が出ている。
この傾向には歯止めがかからないようで、つい先日も、いよいよ究極のところまで来たと業界では話題になっていたところだ。ブエナ・ビスタのCEOが、公開と同時にDVDを発売する考えがあることを発表し、関係者を驚かせたのだ。さらには公開している映画館で同時にDVDを販売することも検討しているという。ハリウッド関係者は、公開と共にDVDをリリースすれば、観客の映画館離れを加速させて興行成績を悪化、カウチポテト族を増やすだけだと批判している。
一方で、インディ系映画の関係者の間には、「まずはより多くの人に映画を観てもらうことが重要」だとして、最も注目が集まる劇場公開時にDVDを発売することは、その映画をより広く認知してもらうには有効だという考えもある。実際、来年1月にマグノリア・ピクチャーズ配給でニューヨークとLAだけで公開されるスティーヴン・ソダーバーグ監督作「Bubble」は、公開から4日後の1月31日にDVDがリリースされることに決まった。劇場数が限定されている上に公開期間が短いインディ作品では、宣伝の相乗効果が見込めるのだろう。
映画ファンの一人としてこれはとても興味深いことだ。この頃は「エンターテイメント・ウィークリー」という映画雑誌を読みながら、「この映画は映画館で観よう」、あるいは、「この作品はDVDで観よう」と、選別することがすっかり習慣になっている。映画館で観ようと思っていた映画でも、公開中にDVDの発売日が発表されると、DVDを待つことにしてしまう時もある。
ただし、映画館で観なかった作品をDVDで観ると、「やはり劇場のスクリーンで観たかった」と後悔することがある。映画館で映画を観ることと、ホームシアターでDVDを観るという2つの行為は、実は全く異なる経験なのだ。映画館とDVDを同時期に選択できたら、映画館に行く回数はたぶん増えるだろう。
去年4月に発売された「ロスト・イン・トランスレーション」のように、公開されて間もなくDVDの発売予定日が発表され、その後、予想外のロングランが続いたためDVDが発売されてもまだ映画館で上映していた例もある。いい映画なら必ず映画館で観たいし、DVDでも所有したいものなのだ。
また、DVD発売時にリバイバル上映される事もある。ニューラインから1月3日に発売されるこの夏のヒット・コメディ「Wedding Crashers」は、DVDリリースの前日、アメリカ各地で一夜限りのリバイバル上映が行われる予定らしい。ファンはリバイバル上映を観た翌日に、DVDを購入するのだろう。それがコメディ映画というところが、いかにもアメリカらしい。
1211
日曜日。チャイナタウンのお粥の美味しいレストランでランチの後、ロウアー・イーストサイドをぶらつき、カーネギー・ホールでクラシック・コンサートを観賞、フィフス・アベニューを少し歩いてクリスマス・イルミネーションを楽しんで、帰宅した。
と書くと、なかなか優雅な休日に聞こえるが、零下近くの気温に風も出ているとなれば、5分も外にいれば体はすっかり冷えきってしまう。どこに行くにも目的地まで急ぎ足なのだった。
会社と自宅の往復だけの日々で、ここまで寒くなっていたことに気がついていなかった。冬本番を迎える前に、窓と壁のちょっとした隙間を塞いだり、乾燥しすぎるアパート内で使う加湿器の掃除などをやらないといけないが、何よりも大切な冬支度は、厳しい寒さに耐えるための心の準備かもしれない。
1210
12月25日のクリスマスはクリスチャンにとっては最も大切な祝日で、教会では特別なミサが行われることは誰もが知っている習慣だ。毎年、この日はアメリカ大統領夫妻がクリスマス・ミサに参加している映像がニュースで流れ、アメリカがクリスチャンの国であることを再認識させられるのだが、今年はちょっと様子が違うようだ。
全米で8つの大規模な教会が、今年はクリスマスと日曜日が重なったためにミサを行わず、その日は休業することに決定したそうだ。教会側によると、前回クリスマスが日曜日に重なった1994年にはミサへの出席者が激減したこと、家族との時間をより大切にしようという社会的傾向があることがミサを休む主な理由だという。そもそもクリスチャンにとって、日曜日は礼拝日の筈であり、それとクリスマスが重なれば教会に行く理由が倍増しそうなものだが、実際はそうでもないらしい。
今回クリスマス・ミサを中止する大教会は、数こそ僅かではあるが規模が大きいために社会的影響が大きいと考えられるが、大教会ほど宗教的規律に甘く、信者の要望によって柔軟に対応してくれる傾向にあるようだ。
通常の日曜ならば2万人の信者が集まるというある大教会では、ミサを休む代わりにクリスマス向けの物語や神父さんの説教を収録したDVDを事前に配布し、各家族が自宅でクリスマスの祈りを捧げるように呼びかけている。また別の教会では、ミサの様子をネット配信する予定のところもある。あらゆるものがデータ化されている時代ではあるが、クリスマスのミサまでもDVDにしてしまうことには、熱心な信者が猛反発、物議を醸している。
皮肉にも今年はキリスト教関連のDVDの話題が多かった年でもあった。イエス・キリスト最期の12時間と復活を描いたメル・ギブソンの「パッション」が昨年大ヒットして以来、アメリカでは宗教関連の作品がDVDマーケットの一つとして注目されている。つい先月も、ソニー・ピクチャーズがキリスト教色の強いドラマをダイレクトDVD(劇場公開はせずにDVDのみでリリースされる映画)として発売し、教会は僅か100ドルのロイヤリティーを払えばそのDVDを信者向けに上映することができたため、宗教を利用した商品宣伝行為だと批判されていたばかり。
いっそのこと、クリスマスのミサもDVD上映会にしてしまったらどうだろうか・・・。